「協生農法」って何?

協生農法

「協生農法」に注目が集まっています。ソニーグループや伊藤忠商事などの大企業が自社事業として採用したことで認知されるようになりましたが、一体どういう農法なのか知らないという方も多いのではないでしょうか。

いろいろなサイトで説明されていますが、ここでは、簡単にわかりやすく説明していきます。

ソニーグループの説明によると、「協生農法とは、有用植物が育つ生態系を人為的につくり、食料を収穫しながら生物の多様性を豊かにしていく取り組み」(一部引用:ソニーグループポータル)としています。何だかよくわからないですね。(笑)

具体的には「無耕起、無施肥、無農薬、種と苗以外一切持ち込まないという制約条件の中で、植物の特性を活かして生態系を構築・制御し、生態学的最適化状態の有用植物を生産する露地作物栽培法」と、協生農法実践マニュアルの中で定義づけられています。

平たく言うと「ほとんど手を加えないのに、おいしい野菜や果物がたくさん取れる、一見すると野生のような畑にする」という農法だと解釈すればよいでしょう。

協生農法と自然農法の違い

似たような農法に自然農法があります。何が違うのでしょうか。

自然農法と協生農法の共通点として挙げられるのは「無農薬・無肥料・不耕起」だということです。外から持ち込む資材を最小限にして自然の力を利用します。

二つの農法の異なる点は「人為」に対する捉え方です。

自然農法では「自然に従い、なるべく人為的な介入は避ける」ということが重要視されるのに対し、
協生農法では「自然から学び、それを模倣する形で人為的にデザインしていく」という考え方です。

協生農法の基礎になるのは、ビッグデータとAIを活用したデータサイエンスです。科学的に自然の働きを分析し、その中で開発される技術と知識を用いて農業に応用していくことを目指します。

協生農法のメリット

環境が豊かになる

協生農法では混植を基本とし、生物多様性を高めることを目指します。ですから協生農法に従うと、多様な生物種が生息する豊かな環境を創り出すことができます。

資材費を節約できる

協生農法では基本的に外から農薬や肥料を含む資材を入れません。入れなくても、生態系が豊かになると安定して収穫が得られるようになりますので、通常の慣行栽培に比べると資材代を圧倒的に節約できます。

総収量が安定しやすい

慣行栽培で行われるような単一栽培の場合、例えばある病気がまん延した時にはその年の収量はゼロになる、というようなケースもあります。しかし、多様な有用作物が混植されている協生農法では、ある作物が病気でやられても、他の作物が取れる、というように、全体で見た時には安定的に作物を収穫できます。

協生農法のデメリット

単作には向かない

協生農法は、あくまでも自然のサイクルに従って栽培していきます。ある年にはたくさんできる野菜が次の年にはほとんどできないということもあり得ます。ですから特定の作物について毎年同じ量の収穫をするのが難しいというデメリットがあります。

人的な手間がかかる

ほとんど手を加えない農法なのに、手間がかかるのはおかしいと思われるかもしれません。

しかし、除草剤をまかないため、雑草の管理が必要になるほか、混植を基本とするため、種まきや定植、収穫も単一栽培に比べると作業負担が大きくなります。そのため大規模に収益化したい場合や人手が少ない場合にはデメリットになります。

混植のタイミングが難しい

協生農法は、多角的に検証された理論を基に原則やその他の方法が規定されています。

しかし、それらを実際の畑に応用する際には、どの時期にどういった作物を混植するか、どの雑草を残してどれを生かすか、などその場所ごとでの判断とデザインをしていくことになります。それぞれの植物の発芽のタイミングや葉の広がる大きさなど、植物への知識が重要になってきますので、実際には一人一人の力量によるところも大きいです。

以上、簡単ではありますが、協生農法の説明でした。